インディーゲームを翻訳して海外発信するには
翻訳という仕事はビジネスやコンテンツ、エンターテイメントなどのあらゆる場面で必要とされる可能性がありますが、昨今は誰でもゲームを作ることができるようになり、いわゆる”インディー”と呼ばれる製作背景のゲームも生まれてきました。ここでのインディーとは、Independentの略で、小規模・低予算・少人数で開発されるゲームを指すことが多い用語です。
そしてこうした小規模なゲームが時折大きなヒットを飛ばすことがあることは、例えばOvercookedやAmong Us、はたまたUndertaleといったゲームの台頭から期待できることと言えます。こうしたインディーゲームに多く見られる特徴として、ゲーム性が分かりやすく、操作が簡単であるといった特徴があります。これはつまり、翻訳することによって海外展開すれば、一気に販売が加速される可能性を秘めているということでもあります。
では、海外展開を目してこうしたインディーゲームを翻訳する場合には、どういったことがポイントになるのでしょうか。これについて、日英翻訳をするケースで少し掘り下げてみましょう。
そのゲームは言語依存するか
日本語のインディーゲームを英語にする場合、まず考慮するべき点が「そのゲームにおいてメッセージやテキストがどれくらい重要か」ということです。例えばアクションゲームであれば、操作説明やルール説明で致命的なエラーがなければ、多くは機械翻訳で済ませてしまっても良いというケースもあるかもしれません。もちろん、プロが翻訳することでより製品のクオリティを高めたいという場合にはその限りではありませんが、ゲームの内容が言語依存しない場合、無理に翻訳を外注する必要はないということもあるでしょう。
とは言え、ゲームの説明欄(例えばStreamなどのプラットフォームでのゲーム説明や、既に遊んでいる人のレビューなど)はしっかりとした英語であるべきポイントです。その辺りの英語が支離滅裂であったり違和感のある英語であったりすると、「そういうところに予算を掛けていないか、あるいは注意を払っていない販売元」ということになり、印象としては良くありません。これはそのゲームに対する期待度が低くなるのみならず、ゲーム販売元のブランドとしても良くない傾向と言えます。
特に複数のゲームがどんどん生まれていくインディー市場においては、その販売元の会社イメージはとても重要と言えます。「この会社の新作なら買ってみよう」というように、会社自体にファンが付くのはインディー市場では大きなアドバンテージになるのです。こうした点を踏まえて、自社のブランディングやイメージが傷つかないようにするためにも、この点についてはプロフェッショナルな英語にしておくことが望ましいでしょう。
ゲーム内テキストの重要度が高い場合
一方、ゲームが例えばテキストメインであったり、シミュレーションゲームであったり、RPGであったりするような場合、ゲーム内テキストは大きな意味を持ちます。これを機械翻訳することは避けた方が無難です。
まずは機械翻訳で大まかに訳してから全体の翻訳を整えるという手法もあるのですが、ゲーム翻訳の場合は結局原文や文脈をひとつずつ確認していく必要があるため、この手法もゲーム翻訳においてクオリティを求める場合には好ましくないと言えます。
個人に発注するか、翻訳会社に発注するか
特にゲームが大容量の場合には、ゲーム全体での翻訳の質を一定にしたり、特定のキャラクターの口調を固定したりすることが必要にもなるため、そのあたりの管理をできるように翻訳していくことが求められます。
こういった場合、翻訳者目線で最も助かるのは「最初から全部を任せて頂く」ということです。ある翻訳者がひとりですべてのテキストを翻訳するとなると、当然、質は一定に近くなり、翻訳の創意工夫も首尾一貫したものになります。結果として、全体の表現がより安定した、高品質なものになることが期待できるのです。ただ、この場合にはひとりがすべてのテキストを翻訳することになるというその文量の多さから、納期面が課題となるということもあり得ます。
ただ、それを差し置いても、例えば実際に翻訳を実装してみるとテキストがはみ出てしまうから直したいだとか、実際にシーンとして流してみると違和感があるから別のパターンにしてみたいといったような要望にアジャイルに対応できるというのは個人翻訳家に依頼するメリットと言えます。あるいは、最初から個人翻訳家をゲーム開発のプロジェクトに取り組んでしまうというのもアリでしょう。
では翻訳会社に依頼すればどうかということになると、この場合は多くの場合複数の翻訳者で分担して翻訳することになります。その際に質や訳調が一致するように内部施策やツールが用いられることはあるのですが、それでも最終的な成果物には全体の質にばらつきが出てしまうことがあります(これは翻訳会社のマネジメントの問題であったり、担当した翻訳者やレビュワーなどの技量の問題であったり様々です)。納期面では手分けして作業する分早くなる可能性がありますが、質が安定しにくいという面はどうしても残ります。
予算や依頼の仕方について
実際の納期や文量によって予算は異なりますし、翻訳家によって独自のレートを決めていることもあるため、なかなか特定の予算を一律で提示するというのは難しいのが現状です。もちろんこれはゲーム翻訳を依頼したいというクライアントにとっても難しいと感じるところで、依頼がしにくいポイントと言えるのではないでしょうか。
しかし、基本的にフリーランスの翻訳家にお見積もりの打診をしていただくことは無料です。まずは、ぜひ問い合わせをしてみてください。そのやり取りの中で「良いな」と思ったなら、きっとその翻訳者に頼むのは正解です。逆に「ちょっと違うかな」や「なんだか上手にコミュニケーションができないな」と感じたなら、その人に頼むのではなく別の人を探すのが良いかもしれません。個人との付き合いですから、相性を重視して翻訳者を選ぶのはひとつの重要な判断基準と言えます。
まとめ
総じて見ると、クオリティを高める目的であれば基本的には機械翻訳よりも翻訳者に任せた方が良いと言えます。特にゲームのインストラクション部分や、Steamなどのプラットホームにおける説明分などは、表現としても魅力的である必要があり、なお翻訳のクオリティが求められると言えるでしょう。
とは言え、例えば試作品段階のものをいきなりプロに翻訳させるといったことは必要ありません。作成段階では機械翻訳をメインにして、プロダクトとしてローンチする段階になったらプロの意見を聞いてみる、といったようにするのでもOKです。その際には試作段階での機械翻訳について、そのままで良さそうなところがないかを確認してみるのも良いでしょう。