英検一級の要約問題で0点が多発した件について

本記事の3行要約

  • 要約は、言い換えの難しさも含め採点基準の設定は容易ではない

  • 今回の英検一級の要約問題では「90〜110語」という厳密な語数制限を守らなかったことが0点の主因と考えられる

  • 語数制限の線引きや採点基準の周知など課題はあるものの、受験者としては規定を守った答案作成が依然として不可欠である


2025年度第3回の英検において、要約問題の採点が例年以上に厳しかったのではないか、という声が広がっています。実力のある受験者であっても要約問題で0点になったという報告があり、「なぜそのような結果になるのか」と疑問を抱く人が少なくありません。

本記事では、今回の件をきっかけに、要約問題の難しさ、語数制限の意味、そして試験としての妥当性について整理します。


要約問題は本質的に難しい

まず前提として、要約という行為そのものが非常に高度な作業です。多くの場合、「情報を抜き出して短くすること」が要約であるとされがちです。しかし本来の要約とは、単なる情報の取捨選択ではありません。情報のレイヤーを変え、抽象度を上げて再構成することです。

また、「何のために要約するのか」という目的も重要になります。例えば、子ども向けに分かりやすくまとめるのか、専門家向けに重要点を整理するのか、特定の論点に絞って要約するのかといったように、目的が明確でなければ、適切な要約は成立しません。したがって、出題する側も採点する側も、その評価基準を明確にするのは簡単ではない面があります。

言い換えの難しさと採点の問題

要約問題では、原文の語句をそのまま使用するだけでは評価が伸びにくい傾向がありますが、また同時に原文のキーワードを適切に利用することも求められます。つまり、受験者は内容を保持しつつ、自分の語彙で言い換える必要がありますが、ここで問題が生じます。例えば類義語だがニュアンスが微妙に違う、文脈上は完全な置き換えにならない、コロケーションが不自然になるといったように、ただ辞書的意味から語彙の置き換えをしても良い言い換えにならないことがあるからです。

このような細かな違いをどこまで減点するのかは、極めて難しい判断です。そのため、要約問題で高得点を取ること自体が難しく、さらに一貫した採点基準を設定することも容易ではありません。もちろん、テストとして出題されている以上、その『一貫した採点基準』が設定されるべきであることは確かです。しかし現実として難しい面があるということは、この『要約問題』は満点を狙うような部分ではなく、いかに減点されないかを狙うセクションというのが合格を目指す場合のアプローチになりそうです。通常、減点の理由は、加点の理由よりも明確で明らかであるからです。

今回の焦点:語数制限

今回、多くの受験者がこの要約問題で0点になってしまうという珍事が起きました。よくよくその理由として考えられる考察を見てみると、どうやら語数制限を守っていなかったことが原因であるようです。

今回の要約問題では、between 90 and 110 words と明確に指定されていました。around ではなく between です。つまり、90語以上110語以下というのは厳密な範囲であったということになります。では、語数の超過・不足による0点という判断は妥当でしょうか。ここは意見が分かれるところです。

受験者側の感覚としては、「1語超えただけで0点は厳しすぎる」や「英語力を測っていないのではないか」という感覚は理解できるものでしょう。一方で、「あくまで試験であるのだから、指定されたルールは守るべき」という考え方もあります。

ルールを守るべきであるのは確かだが、それでも0点というのは厳し過ぎるのではないか、という考え方もあるでしょう。しかし、仮に語数違反に段階的な減点を設けた場合、どこに線引きをするかという問題が発生します。

例えば、70語で非常に質の高い要約と、100語で平均的な要約であれば、どちらを上に評価すべきでしょうか。英語力を判断するなら前者かもしれません。しかしそれなら、そもそも語数制限を設けた意味がなくなってしまいます。加えてルールを守らなかった答案を守った答案より高く評価することは、試験制度として整合性を保ちにくいとも考えられます。

極端な例として、200語書いて非常に優れていたとしても採点されないのは明らかでしょう。では、111語なら許されるのか。115語はどうか。結局、どこかで線を引く必要があります。その線を引くなら、やはり明示されている90〜110単語の範囲ということになります。

採点基準の周知は十分だったか

もし今回、語数違反が従来より厳格に扱われたのだとすれば、「それが事前に十分周知されていたか」や「過去は多少の超過でも採点されていたのではないか」という点は検討の余地があります。

採点基準が大きく変更されたのであれば受験者への明確な説明があってもよかったのではないか、採点基準はある程度一貫したものであるべきではないか、というのはその通りです。この辺りは今後の英検の対応に注目したいところです。

AI採点の可能性について

一部では、語数カウントや内容判定にAIが使われたのではないかという推測もあります。

しかし重要なのは、AIか人間かではなく、結果として妥当な採点がなされているかどうかではないでしょうか。AIであっても一貫性が高く妥当であれば問題はありませんし、人間であっても恣意的な判断があれば信頼は揺らぐことになるはずです。

そのため、今回の判定が妥当な採点であったかどうかと、AIが使われたかもしれない問題は分けて考えた方が良いでしょう。もちろん、パフォーマンスのよくないAIが用いられたとか、あるいはこれまでの採点基準を踏襲していないAIが用いられたためにこのような混乱が起こったということであれば、そこには改善の余地があります。

しかしいずれの場合でも、受験者としてこれについて対応できることは多くありません。語数を守りつつ求められている要約を試験の範囲内でこなすことを目指していくしかないのです。


参考:【翻訳家が語る】英検・大学入試に出てくる『要約問題』の答え方

Akitsugu Domoto

Translator, wordsmith, speaker, author and part-time YouTuber.

https://word-tailor.com
前へ
前へ

Amazonでの書籍のレビュー総数が1000を越えました

次へ
次へ

英語学習のメンタリング・コーチングの予約が簡単になりました