自作で翻訳アプリを作りました

最近、作業環境を少し見直して普段使っているツールを整理したりしていたのですが、その流れで自分用の翻訳アプリを作りました。OpenAI の Codex を使って開発したものです。以下、設計意図や翻訳アプリに翻訳者として求めることなどをまとめます。ちなみに該当のアプリはいくつかの要因のために一般公開はしていないのですが、YouTubeのメンバーシップ限定で公開中です。

これまでの翻訳アプリ

これまでは DeepL を使っていました。その主な理由はデスクトップ上に常駐させておけること、ショートカットキーですぐ呼び出せること、そして作業を中断せずに翻訳結果を確認できることといった、アクセスのしやすさにあります。もちろん自動翻訳を使う上ではある程度の精度も欲しいところですが、機械翻訳はどのサービスを使ったとしても最終的には人間による確認が必要になりますし、100%正確な翻訳が常に約束されるわけではありません。それであれば、翻訳精度そのものを追い求めるより、使いやすさを重視すべきだと考え、DeepL を用いていたという次第です。

ただ、個人的に翻訳アプリを使う場面と言えば、自分の翻訳のセカンドオピニオンや、MTPE などの機械翻訳を用いることを前提としたタスクに限られるため、それほど活躍の場面が多かったわけではありません。そのため、限られた使用回数のために高額なサブスクリプション費用を支払うことになっていました。

そこで、Codex を用いて自分専用の翻訳アプリを作ろうと考えました。

本アプリの特徴

今回作ったアプリは、コピーしたテキストをショートカットキーで即座に翻訳するだけの非常にシンプルなものです。テキストをコピーした状態で Option + Command + C を押すと、クリップボード上の最新テキストを自動で翻訳して表示します。ブラウザ上の文章でも、PDFでも、基本的にはコピーできるものであればそのまま翻訳できます。また、クリップボードに保存したテキストを直接翻訳できるので、例えば画像などのテキストを OCR で取得した場合にもそれを翻訳することができます。

全文をまとめて翻訳することもできますが、設計としては一文単位での確認を想定しています。これは、特に MTPE などのタスクの場合にはまとめて翻訳するよりも部分ごとに翻訳した方が効率的であるように経験的に感じているからです。

翻訳には OpenAI のAPIを使用しており、現在は GPT-5 mini を利用しています。より高性能なモデルを使う選択肢もありますが、このツールでは速度を優先しています。最終的な自身での確認を前提としているので、極端に高精度であることよりも、翻訳の指示を出してからすぐに翻訳されるレスポンスの高さを重視したいからです。

またAPI利用は従量課金制のため、例えば大量の論文やホームページ全体などを一気に翻訳することを繰り返すような用途にはあまり向いていませんが、一文単位の補助的な利用であれば、月額制サービスを契約するより安く済むことが期待されます。

翻訳スタイルについては、自然な訳文を出力する Natural と、より直訳寄りの Literal の設定が可能になっています。Literal の方は不自然な訳になることもありますが、機械がどう解釈したのかを把握しやすいという利点があり、機械翻訳の誤訳に気付きやすいというメリットがあります。また、固有名詞や用語の統一を行うためのカスタム指示も設定できるようにしました。完全に意図通りになるわけではありませんが、補助用途としては充分に実用的だと感じています。

機械翻訳をどのように使っていくべきか

これまで、主に Tips の記事の中で、機械翻訳について様々な提言を行ってきました。僕自身は、機械翻訳という技術は便利なものですし、既に世の中になくてはならないものだとも思っています。ただ一方で、機械翻訳を使い熟す上ではどうしてもユーザー側のリテラシーや語学力が必要になることは代わりません。

そこで、ユーザー側にそのようなリテラシーや語学力があることを前提とした設計の翻訳アプリを作った、というのが今回のまとめとなります。気になる方は、よろしければぜひYouTubeのメンバーシップ動画からご確認ください。

僕自身の翻訳に対する考え方や機械翻訳に対する考え方の詳細については、『翻訳雑論』という拙著にまとめております。よろしければ合わせてご参考ください。

Akitsugu Domoto

Translator, wordsmith, speaker, author and part-time YouTuber.

https://word-tailor.com
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【翻訳カテゴリー1位】翻訳についてまとめた “翻訳雑論” を出版しました