SEOでよくある失敗について

YouTube などのSNSが一般的になり、様々な情報をネット上で得ることが可能になって久しいですが、ここ数年では Bard や ChatGPT といった生成AIがネット上を検索して利用者に関連情報を提供することも増えてきました。特に Google は検索結果から関連性の高い情報をAIによって処理してテキスト的に検索結果画面に表示する試みを行っております。『検索』という行為が変化していく中で、SEOの重要度は高まるばかりです。

しかし、そうした中でSEOの在り方や具体的なプラクティスが大きく変わるわけではありません。Google は、一貫して『利用者にとって有益なサイトを上位表示する』ことを目指しています。したがって、『結果として検索順位が上がる』のが最も好ましいのであり、SEO対策を付け焼き刃で行うのは長期的には効果が薄いということもあります。

それでも、SEOに纏わる誤解や間違い、誤った期待は今でも広く信じられています。ここでは、SEOについてよくある勘違いを参考にしつつ、一般的な失敗と一緒にまとめていきます。


1: 長期的な対策として捉えていない

SEOとは、『自分のサイトが、ターゲットとして自分が想定しているオーディエンスが特定のキーワードで検索した際に、ちゃんと上位表示されるようにする』ことであると言えます。しかしサイトを上位表示させることは、一朝一夕でできることではありません。

よくある誤解は、「サイトを上位表示させるために特定のキーワードを盛り込んだ記事を出したり、あるいはそうしたキーワードをサイト内に埋め込んだりすれば、それで上位表示されるようになるだろう」というものです。しかし Google の検索順位は用いられているキーワードの頻度や数だけでなく、そのサイト自体のレピュテーション(これまでそのサイトがどのように運営され、どのような人に閲覧されてきたか)にも大きく影響を受けます。このレピュテーションは、いわばそのサイトの歴史に対する評価のようなものです。

SEO対策を行う際には、このレピュテーションを高めていくことが重要になります。そしてそのことは、SEO対策を長期的に行っていくことの大切さを示しています。例えば既にある程度のレピュテーションが獲得できているサイトであれば、特定のキーワードを用いることですぐに上位表示されることもあるかもしれません。あるいは、後述するような内部施策を行うことで、ポテンシャルを発揮できるということもあるでしょう。しかし、そうでない場合も多いのです。

逆に言えば、短期的に売上を伸ばしたいというような場合、SEO施策とは別に、広告を出すなどの施策を併用することが求められることもあるということになります。SEO施策は長期的にはリターンが大きい業務投資だと言えますが、芽が出るまでに時間が掛かることを前提としてプロジェクトを動かす必要があるのです。

2: 内部施策が後手に回っている

SEOで広くイメージされるのは、SEOキーワードを盛り込んだ記事を作成することかもしれません。しかし実際には、サイト内部のコードや、それぞれのページのタグのつけ方などに問題があることもあります。

これは例えるなら、『たくさんの項目が載っている百科事典だが、内容があいうえお順になっていない、ページがバラバラ、索引に収録されていない項目がある』というようなことです。せっかく内容が優れていても、そのような使いづらい百科事典は選ばれにくいでしょう。サイト内コードやタグが最適化されていないページは、まさにこういった百科事典のようなものです。

もちろん特定のキーワードとサイトを関連付けていくために記事を書いたりキーワードを(不自然にならない程度に)用いたりすることは重要なのですが、一方でサイト自体の裏側がちゃんと整理されているかを確認することが重要です。

ちなみに、こうした内部施策に関連して『やはりサイトはノーコードではなく自分で作った方が良いのではないか』、『サードパーティのサービスを使うのは良くないのではないか』、『いわゆる Wordpress でなければ駄目なのではないか』という誤解があることがありますが、これは必ずしも正しくありません。

もちろん、自分でコードを書いてページを作成できれば、問題が起こったときに直接そのコードを修正したりできるのはメリットです。しかし、それはサイト管理の属人化に繋がる可能性もあり、一長一短と言えます。

2024年1月の現状、Google の検索順位において、どのようなサービスによってサイトを作成したかは問題ではありません。重要なのは、そのサイトのレピュテーションがどうであるか、またユーザーに適切な情報を適用できているかという点なのです。

3: キーワード選定やカスタマージャーニーの理解が不充分である

大抵の場合、ある業界には、その業界において最も知名度が高い会社やブランド、プロダクトなどがあるものです。その業界においてよく用いられているキーワードで確実に上位表示されるようにすることはもちろん重要ですが、そうした覇権的なブランドを『追い抜く』ことは難しいこともあるかもしれません。

そこで重要になるのが、より細かく指定されたキーワードで上位表示されることを狙う(いわゆるロングテールのキーワードを考える)ことであったり、一見してその業界に関係がないと思われるようなキーワードでもカスタマージャーニーの道中にあると想定して取り入れてみるというようなことであったりします。

言い換えれば、業界で当たり前に使われているキーワードについては、それだけを突き詰めていても頭打ちになりやすい面があります。もちろん、その『頭打ち』まで順位を高めることは重要なことですが、これまでにリーチできていなかったターゲットにどのようにリーチしていくかを考える上で、キーワード選定は重要な意味をもちます。

4: ローカリゼーションとSEOが混同されている

ローカリゼーション(Localization)とは、翻訳をする際などにターゲットの文化的背景に合わせて表現を調整・変更することです。ローカライズされた翻訳は現地のターゲットにとって『自然な』翻訳として理解される傾向にありますが、一方で翻訳前の文章の文化的背景とは切り替わってしまっていることから、必ずしもローカリゼーションが最適な翻訳手法であるとは限りません。

このようなローカリゼーションは、SEOにおいても重要な意味を持ちます。基本的にSEOとはターゲットの検索結果に上位表示されることを目指すので、ローカリゼーションの作業が含まれる傾向にあるためです。しかし、SEOとローカリゼーションが即ちイコールというわけではありません。

SEOにおいては、顧客獲得に繋がる(あるいはサイト訪問者と関連する)キーワードを選定し、これが検索された際に上位表示されることを目指します。そのため、原文にあるキーワードを(検索性を必ずしも考慮することなく)現地の文化背景に合わせたワードに変換するローカリゼーションでは、完全に対応できないことがあります。こうした理由から、SEOにおいて必要な分析とローカリゼーションにおいて必要な技術は、まったく異なるのです。

ローカリゼーションや翻訳とSEOを分ける意識は、特に機械翻訳を用いる場合に重要と言えます。昨今、DeepL や ChatGPT といった生成AIにより、一見して自然な見た目の翻訳を誰でも得ることができるようになりました。もちろん、こうした機械翻訳は不完全であり、機械翻訳を使って良い場面と使うべきでない場面を分けることは重要ですが、それでも便利なツールであることは確かです。

ただ、そうした『一見して自然な見た目の翻訳』は、仮に原文がSEOを考慮された文章であっても、必ずしも翻訳後の言語においてSEO的に最適とは限りません。そのため、万全を期すのであれば各言語でのSEO対策が必要になりますし、各言語話者のカスタマージャーニーを想定する上では、文化的背景を理解しておくことも重要になります。

Akitsugu Domoto

Translator, wordsmith, speaker, author and part-time YouTuber.

https://word-tailor.com
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