英語のコーチングとメンタリングの違い: どちらのサービスを受けるべきか
英語を学ぶ上でプロのサービスを受ける場合、様々な選択肢があります。例えば英会話教室や家庭教師、あるいは塾講師もこれに入ってくることがあるでしょう。そのような中で、英語を学ぶことを『スキル』として高めることを意識して『コーチング』や『メンタリング』といった形でサービスが提供されることがあります。
では、『コーチング』や『メンタリング』は、通常の英語の授業とどう異なるのでしょうか。また、『コーチング』と『メンタリング』はどう違うのでしょうか。この記事では、私自身が英語学習のコーチングやメンタリングのサービスを提供していることを踏まえて、コーチングやメンタリングの定義を踏まえ、特に新しい概念であるメンタリングについて、メンター(mentor)やメンティー(mentee)、メンターシップ(mentorship)といった言葉が何に対応しているのかについても解説します。
従来の英語学習とコーチングやメンタリングの違い
英語学習における通常の『授業』(一般にイメージされるもの)の多くは、英語を学ぶこと自体を目的とし、それを理解するために必要な文法事項や語彙などを解説します。どのような理由で英語を学んでいるにせよ、英語自体を理解することは避けられないため、こうした学びや座学は不可欠です。したがって、このような従来の授業や勉強方法が、コーチングやメンタリングといった手法と比較して古いだとか、劣っているだとかということは決してありません。
これに対して英語のコーチングやメンタリングは、定義が曖昧なところもあります。サービスによっては自分が提供しているものをコーチングやメンタリングであるとラベリングするためにそういった言葉を使っている面も少なくないでしょう。
ただ、コーチングやメンタリングという言葉が好き勝手に使われている適当な概念であるということではありません。可能な限り、コーチングとメンタリングという言葉を適切なレンズで見てみることにしましょう。
英語のコーチングとは?
英語のコーチングは、例えばダイエットのコーチングやスポーツのコーチングのイメージに近いものと考えて良いでしょう。コーチは英語学習について具体的な手法や理論を理解しており、それを用いて適切な『するべきこと』を指示します。つまり、英語自体を教えるというよりも、英語の勉強方法を教えるイメージです。とは言えもちろん、英語の勉強方法を教えるためには、英語というものについて深い理解をしていなければなりません。
したがって、例えばコーチングを受ける生徒から質問があったとき、それに対してコーチが『答え』を与えるかどうかは分かりません。時には「○○を調べると良い」や「XXと考えると答えが見えてくる」のような返答になることもあるでしょう。これは、英語学習の姿勢そのものを身につけてもらうことを目的とした指導であると言えます。
では、メンタリングとはどう異なるのでしょうか。その上では、メンタリングという言葉を少し掘り下げる必要があります。
そもそもメンタリングとは?
メンタリングとは、メンターとメンティーと呼ばれる関係性(メンターシップ)における具体的な指導行為のことです。ここでは、これらの言葉の根幹にある mentor という言葉を掘り下げましょう。
mentor という言葉は、『オデュッセイア』に登場する人物、「メントール」が語源となっています。このメントールはオデュッセウスに助言をする立場の人間として描かれており、このオデュッセウスに対するメントールの役割を担う『助言者』などのことを現代でも『メンター』と呼ぶようになりました。
この mentor という言葉は名詞だけでなく動詞としても用いられるようになり、メンターに師事する側を mentee(メンティー)と言うようになります。そこから、メンターとしての薫陶や振る舞いをすることを mentoring(メンタリング)と呼ぶようになり、この mentor と mentee の関係性を mentorship(メンターシップ)と呼ぶようになりました。
つまり、元々のメンタリングとは、メンターとメンティーとの関係性の中にあるやり取りのことであり、何か具体的な行為をメンタリングと呼ぶわけではなかったのです。
加えて、メンターとは本来自称するものではなく、『○○をメンターだと思っている』のように、一方的に誰かをメンターとして師事するといったこともあり得ます。この場合には、両者の間にメンターシップがあるというよりも、特定の人物をロールモデルや理想像として、その振る舞いから『学び取る』ような向きがあります。
一方、メンターシップという関係性が生まれるためには、両者が向き合うことが必要です。つまり、誰かにメンターとして認められ、メンター側もその人を意識して振る舞うようになるとき(つまりその人をメンティーとするとき)、初めてそこにメンターシップが生まれると言えるでしょう。こうしたことから、メンターシップやメンタリングという言葉は、例えば会社教育などの場において『先輩から積極的に学ぶ場や環境、制度』をメンターシップと呼ぶこともあります。
このように、本来は関係性を言い表す語であったメンターやメンターシップといった言葉でしたが、コーチングとの対比的に用いられることが多くなり、コーチングとは違う意味づけが意識的に行われました。そのため、現在では『メンター』という職業や立場が確立され、これを自称することにも違和感が薄れてきています。本来は関係性が先にあるはずのメンタリングやメンターシップをビジネスとして『メンタリングを提供する』と宣伝できるのは、このことを表していると言えるでしょう。これ自体は良いことでも悪いことでもなく、言葉の使われ方の移り変わりの一例と考えれば良いかと思います。
ちなみに、稀に勘違いされることがありますが、いわゆるメンタル(mental)やメンタリティ(mentality)という言葉と mentor という言葉は、語源的には関係がありません。したがって、例えばコーチングと比較してメンタリングの方がメンタルを鍛えるというようなことはありません。ただし、具体的な勉強を教えてくれる個人指導や学習に対してコーチングやメンタリングはより『態度』を養うことを目的としている面があり、その意味でメンタリティを鍛えることに繋がることはあります。
英語学習におけるコーチングとメンタリングの違いとサービスの選び方
では、英語学習においてメンタリングはコーチングとどのように異なる意味付けが行われたのでしょうか。
この辺りについては、例えば『コーチングは短期的な能力開発に主眼があるがメンタリングは長期的な視野を持つ』など様々な説明がされますが、個人的には、その語源や元々の意味を鑑みるに、コーチングが『具体的な理論を下地に生徒を引っ張ったり背中を押したりすること』であるとすれば、メンタリングは『自分の在り方を見せることで相手を触発し、自発的に行動したり答えを探したりするようにすること』であると言えるかと思います。
このように、コーチングは具体的な答えや、それを得るための方法を与えますが、メンタリングはそうした直接的なものを与えず、自己発見させるという違いがあるとも言えるかもしれません。また、コーチングはあくまで学び方や結果を出すための指導がメインですが、メンタリングは『メンターの振る舞いからその時々で自分に必要なことをメンティーが学び取る』というものであることを考えると、例えば英語に関する考え方やキャリアなど、より広い視野での指導が行われることもあるでしょう。
しかしこう考えてみると、コーチングとメンタリングは必ずしも相反する概念ではないということが分かってきます。あるコーチングを行う人を、そのコーチングを受ける側が「この人をメンターだと思おう」と感じたとすれば、そのコーチはコーチングを通じてメンタリングも同時に行っていると言えます。また、メンターとして振る舞う人が『答えを与えてはいけない』わけでもありません。ほか、メンタリングによってメンティーを薫陶しようとするとき、その手法としてコーチングの理論が役に立つということもあります。
このように、コーチングとメンタリングの区別は意外と曖昧なところも多いと言えます。したがって英語学習のコーチングやメンタリングを受ける場合、『コーチングかメンタリングか』ではなく、具体的に提供されるサービスに注目することが重要だと言えるでしょう。
まとめ
本記事では、従来の英語学習における『授業』との違いや、英語学習におけるコーチングとメンタリングの違いについて確認し、その違いが恣意的なものであることもあること、具体的なサービスに注目することが重要であることを確認しました。
英語を学ぶ旅は困難なことも多いですが、コーチやメンターはそれらの困難を克服する手助けとなります。適切なコーチやメンターはあなたの目標を理解し、それに合わせた学習プランを設計したり、日々の学習に関する悩みを解決したりしてくれることでしょう。また、学習法の改善やモチベーション維持の助けとなり、あなたが英語を効果的に学び、自信を持って活用できる指導者、あるいは助言者になってくれるはずです。
もしもあなたが『英語学習をしているはずだが効果がでない』であったり、『英語学習を継続することができない』であったりといったことで悩んでいるなら、それは英語学習のやり方に合っていないところがあるのかもしれません。ちょうど、間違った減量法では健康に害があるのと同じようなものです。そうした心配があるなら、一度コーチングやメンタリングといったサービスを受けてみるというのも良いでしょう。その結果、自分のやり方が実は間違っていないということが分かることもあるはずです。
追記
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追記 2023.12.27
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