Grokの活用例と翻訳能力について
X(旧 Twitter)にて、Grok という AI ツールがリリースされました。2024年5月9日現在、このツールを利用できるのは X の Premium ユーザー、および Premium+ のユーザーです。
これが自分のアカウントでも利用可能になったので、これまで ChatGPT(特に ChatGPT4)や Claude 3、Gemini といったAIツールの翻訳能力を比較してきたので、Grok の翻訳能力についても比較してみました。翻訳能力の後に、何に利用できそうかということについて解説します。
短文の翻訳能力
まずは手始めに短文を翻訳させました。この短文は、Gemini や Claude 3 にも翻訳させたものです。
提出された翻訳を見るに、直訳というよりも、意図を読み取って翻訳をしようとしているような感が窺えます。具体的には、ends up as a misunderstanding の部分が「適切に翻訳されない」のように訳出されていることが分かります。
ただし、今回の場合は ends up as a misunderstanding を「適切に翻訳されない」と訳出すると文意がおかしくなってしまいますし、その後の bad translation を「間違った訳である」と訳出するのも拙いと言えます(間違った訳ならば誤訳であるからです)。
どうやら Grok は、『自然な翻訳』をしようとしているのであり、直訳的な翻訳のアプローチではないということが分かります。このアプローチは ChatGPT や Claude(あるいは Gemini)にも共通するものですが、他のツールと比べて抜きんでて良いという印象ではなさそうです。
長文の翻訳
以前に ChatGPT や Claude 3、またクラウドソーシングサイトの翻訳者と DeepL などとの比較に用いたものと同じ原文とプロンプトを用いてみました。結果は【こちら】と【こちら】からご確認いただけます。
長文の翻訳としては、大きなミスをしているような感はないものの、どことなくぎこちなかったり、何となく不慣れな感じがしたり、といった印象です。敢えて grok で翻訳のタスクをする必要はないでしょう。
ちなみに、Grok は他のツールであれば『不適切な言葉使い』であるために処理できないような文章生成が可能であることが知られていますが、日本語訳をするにおいては、敢えて『粗雑な言い方で訳せ』というプロンプトでは特に違いは見られませんでした。
一方、原文をより粗野な書き方にリライトするように指示した際には英語でその書き換えが行われたので、英文を敢えて洗練されていない形で生成したい場合には使える面もあるかもしれません。ただしそれも、翻訳と同時に指示するのではなく、あくまでリライトとして指示させるべきのようです。
主な使い方のイメージ
Grok の優れた点は、どうやら情報の検索性にあるようです。英語で『今日のニュースをまとめて欲しい』などの指示を出すと、それなりにまとめてくれている印象です。
また、特定のジャンルや内容についてまとめてもらうということもできるようです。例えば Apple の iPad Pro のプロモーションビデオである Crush については賛否両論ありますが、これをまとめるように Grok に指示すると次のようになりました。
日本人の反応としては「もったいない」や「ものが壊されることが単純に堪えられない」、「リスペクトに欠けている」といったものが多く、その内容はここには反映されていませんが、それでもどういった背景でどのような意見があるかについてまとめられています。
ちなみに、日本人の意見を抜粋するように指示すると次のようになりました。
おおよそ正しい反応がまとめられています。ただし、日本語のツイートは取得されず、あくまで英語でのツイートが参考として表示されていたので、取得については英語ほどスムーズではないのかもしれません。
以上のようなことから、英語で(主に X 上の)情報をまとめて確認する(また、その後に自分で情報を細かくみていく)上では、Grok は使い勝手が良さそうです。ただ一方で、いわゆる ChatGPT や Claude 3 に普段やらせるようなタスクを任せるというのは不適かもしれません。あくまで X というプラットフォームをより楽しむ(上手く使う)ためのツールとしての位置づけと考えると良いかと思います。