ChatGPTと一緒に翻訳するには

本記事の3行要約

  • ChatGPT や DeepL は翻訳を完全に任せられる段階ではないが、下地作りや補助用途としては有効で、用途ごとの使い分けが重要である。

  • 単純な翻訳速度や操作性重視なら DeepL、複雑な英文の精読や構文理解には ChatGPT が特に役立つ。

  • AI翻訳を効果的に使うには、人間側に言語力や分野知識があり、AIの出力を評価・監督できることが前提となる。


2025年も ChatGPT はさらに進化を遂げ、バージョンは 5.2 にまでなりました。ますます多くのことを任せられるようになり、信頼度も高まったことで、ChatGPT に仕事の大部分を任せられるようになったと感じている人も多いかと思います。では、翻訳についてはどうでしょうか。


ChatGPT か、DeepL か

大前提として、ChatGPT に限らず生成AIや DeepL といった翻訳ツールは、翻訳を手放しで委託できるかというとまだ不安な面もあります。ただ、ある程度誤訳があっても対応できるような状況であれば、訳出の下地として使ったり、情報収集のサポートとして使ったりすることは可能です。重要なのは、自動翻訳で良い場面と、その翻訳に責任を持つべき場面(あるいは、例えばマーケティングやブランディングなどにおいてトランスクリエーションなどを踏まえて翻訳の妥当性を評価しなければいけない場面)をしっかりと分けることだと言えます。

このような前提に立つと、いずれにせよ翻訳の精度が絶対的に100%になることはないので、翻訳について妥当性を評価したり責任を持ったりするべきときには、人間がその翻訳をチェックするという工程が必ず必要になります。このような場面では、翻訳の精度を極限まで高めることを期待するというよりも、いかにそのツールが翻訳業務上使いやすいかということが重要になるでしょう。その意味で、基本的に誤訳が含まれていることを許容して、あるいは人間のチェックを前提として『単純な翻訳を行う場合』であれば、翻訳速度やデスクトップツールの使いやすさなどを考慮すると DeepL を用いるのがオススメです。

ChatGPT の有用性

ChatGPT の翻訳業務上の有用性は、『英文を精読するとき』に顕著だと言えます。例えば少し複雑な構文を精読したいときや、確実に意味をとりたいとき、または少し古い英語が混じっていて単純な機械翻訳では対応しきれないときなどに、『以下の英文について説明してください』といったようにプロンプトを打つことで、その英文を分解してもらえます。英文の前後情報や背景情報を伝えれば、より正確な説明が期待できるかもしれません。

ただしもちろん、それでも ChatGPT が間違えることはあり得ます。そのため、自分が分からないことを聞いて鵜呑みにするのではなく、『ChatGPTの解釈』を確認するようなイメージで訊ねるのが良いでしょう。一例として、マーク・トウェインの小説の一部を解釈させたところ、『刑事』と訳すべき Detective を執拗に『探偵』と訳したり、トウェインのユーモアに関する解釈がまったく的外れであったりしました。しかしそれでも、構文の説明自体は納得できるものではありました。このように、ChatGPT の説明のうち、取り入れられる部分と参考にできない部分の判断ができることが、ChatGPT との協力的翻訳において重要であると言えます。

ちなみに、単純に『説明してください』というだけでなく、『パーシングしてください』と指示をすることで、英文の構造を要素に分解して説明させることもできます。文構造を取ることが難しい場合などには、敢えてパーシングさせるようにプロンプトを限定する方が有効なこともあります。

AIを使いこなすには、AIよりも詳しくなければならない

プログラミングの世界ではAIを用いてコーディングすることが一般的になりつつありますが、まったく知識のない人間がAIにコードを書かせてアプリなどを作ったとしても、修正が必要になった際に対応できないという問題が起こっています。小規模なものでは個人開発の場面で、大規模なものでは Microsoft でも同じことが起こっています

これは翻訳におけるAIの使い方でもまったく同じことが言えるもので、『ある程度英語ができるからこそ、AIを使って業務を効率化できる可能性がある』のだと言えます。もしもその翻訳業務が SEO やマーケティング、ブランディングといったトランスクリエーションやローカリゼーションの要素を持つものや、ゲームのテキストなどエンターテイメントに関するもの、アートなどの芸術に関するものであるなら、やはりそのバックグラウンドの知識も、AIがちゃんと仕事をしているかの監督のために必要ということになります。

Akitsugu Domoto

Translator, wordsmith, speaker, author and part-time YouTuber.

https://word-tailor.com
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ChatGPTの“バイブコーディング”で英語学習アプリを自作する方法