翻訳を外注する際に検討すること
機械翻訳が発達してきた現代でも、英語業務の中で、翻訳家への外注が必要となる場面があります。しかし、翻訳の外注、またその見積もりを得る上で、どういった情報が必要なのかは、初めての依頼では分かりにくいものです。
『とりあえず問い合わせてみる』だけでももちろんOKですが、予めある程度の情報が揃っていれば、見積もりや受注可否の判断までがスムーズということもあります。ここでは、翻訳家を見つけるまでにどのような手順が考えられるか、確認してみましょう。
そもそも翻訳家が必要かどうか、機械翻訳を用いることの妥当性を確認したい場合、【こちらの記事】をご確認ください。
翻訳を外注する前に必要な情報
翻訳会社に依頼する場合でも、Lancers(ランサーズ)や Crowdworks(クラウドワークス)、coconala(ココナラ)などのクラウドソーシングサイト経由で個人に依頼する場合でも、まず必要なのは原文の情報です。
特に原文を用意して頂いた上で、「翻訳の用途」が何であるか、また「いつまで」に翻訳が必要であるか、といったことが重要になります。トランスクリエーションやマーケティング、ブランディングに関連した翻訳であればターゲットのペルソナや狙いたい広告効果などについても考えていく必要がありますが、ひとまず最低限必要なものは、「原文」と「翻訳の用途」、「希望納期」の3つの情報です。
原文があればどのようなジャンルの翻訳であるかが分かり、より専門性に特化した翻訳者を探すことができますし、翻訳の用途が明らかであれば、それに合わせて翻訳者が翻訳を調整することもできます。原文の文量が確認できればおおよその必要日数も分かりますので、そこからご希望の納期に合わせられるかどうかも分かります。
では、翻訳者を探すにはどうすれば良いのでしょうか。
翻訳会社に依頼するメリット
翻訳会社を通じて翻訳を依頼する場合の大きなメリットは、翻訳者のレベルがある程度担保されているであるということ、また翻訳だけでなくチェックなどの複数工程を任せることもできるので、これも合わせて安定した質が期待できるということです。
通常、翻訳会社に翻訳者として登録するためには、希望者はトライアルと呼ばれる試験を受けなければなりません。このトライアルの結果、ある程度の英語力が確認できた人だけがその翻訳会社で翻訳者として仕事を受注できるようになります。つまり、全く実力がない翻訳者に依頼することになってしまう、というようなことにはなりにくいと言えます。
また、翻訳会社に依頼する場合には、翻訳が複数工程で行われることもあります。例えば一次翻訳者がまず翻訳を行い、その次にレビュワーが翻訳を確認する、といったプロセスです。これが何重のプロセスになるかはプロジェクトや会社によって異なりますが、複数の目によって翻訳がチェックされているため、作業の前半で万が一誤訳や誤字脱字などが発生したとしても、それを後半のプロセスでカバーしやすいというメリットがあります。
翻訳会社に依頼するデメリット
翻訳会社が仲介したりしている関係から、お見積もりとしての翻訳料金や文字単価が個人に依頼するよりも高くなってしまいます。この点は、特に予算が限られている場合にはネックになり得ると言えます。
それ以外のデメリットとしては、クライアントと翻訳者の直接的なやり取りができないという点もあります。例えば、最終的な翻訳について「こういう風に変えて欲しい」というような要望がクライアント側から出されることがあります。直接やり取りができれば方向の修正もやりやすいのですが、間にエージェントが入る関係で、どうしてもコミュニケーションコストが掛かってしまうというもどかしさがあります。
加えて、直接的なデメリットというわけではありませんが、あくまで担保されているとは言え、どのようなレベルの翻訳者に依頼が回されることになるかはあくまで翻訳会社の判断ということになります。そのため、最低限のレベルがある程度は担保されているとは言っても、だからといって「必ず高レベルの翻訳家に依頼できる」というわけではありません。
クラウドソーシングサイトで探すメリット
例えばランサーズやクラウドワークス、ココナラといったようなクラウドソーシングサイトでは、翻訳者が直接仕事を受注しています。プラットフォームを介したやり取りになるため、まだ完全にダイレクトなコミュニケーションということにはなりませんが、それでも要望を直接伝えたりすることが可能であるほか、手数料も場合によっては翻訳会社が取り分としている金額よりも安く済む可能性があります。
クラウドソーシングサイトの利用はそれぞれのサイトの規約や使い方によりますが、基本的には「仕事の内容」と「納期」、「予算」をユーザー全体に向けて(あるいはオプションなどによって一部にだけ)公開します。その募集を見たユーザーがそれぞれの自己アピールなどを添えてその仕事に応募するので、クライアントはこの応募内容を確認して最も能力や予算感などから依頼したいと思える人を決定します。
また、複数の翻訳者の見積もりを比較できるのも判断材料になります。基本的には「安い金額を設定している翻訳者」は「駆け出しである」か「能力の上昇志向に乏しい」か、あるいは何らかの戦略的な目的でその金額を設定している可能性が高いと言えます。
一方、ある程度高額な見積もりになる場合、少なくともその翻訳者はその金額に自信を持っているということであり、傾向としてはスキルが高い翻訳者である可能性が高くなります。そのため、予算に余裕がある場合は、安易に安い見積もりの翻訳者を選ばない方が結果としてのクオリティが担保されやすいという面もあります。
その他クラウドソーシングサイトにおけるメリットとして、完全な直接取引ではないため、万が一業務上の問題が発生したときや、翻訳者と連絡が取れなくなったといったような場合には、プラットフォームのヘルプに助けを求めることができる場合もあります。例えばランサーズでは秘密保持契約などもデフォルトで結ぶことになっており、改めて契約書などを用意する必要がないというのも楽なポイントです。
クラウドソーシングサイトで探すデメリット
しかし一方で、直接翻訳者を選ぶという場合には翻訳者の能力を判断するのが難しいという面があります。
クラウドソーシングサイトで翻訳家として活動する人は、プロからアマチュアまで様々です。傾向としてはココナラやクラウドワークスでは副業として翻訳を受注している人が多く、ランサーズでは本業で受注している人がやや多いという印象ですが、その中から本当に能力のあるプロを探すことは難しいことです。
また、クラウドソーシングのプラットフォームで仕事を発注する場合、以後、継続的な発注はすべて同じプラットフォーム上で行うこと、と規約があるケースが多く、一度仕事を依頼して気に入ったからといって、その翻訳者に直接取引を持ちかけるようなことはできません。
参考: クラウドソーシングサイトで翻訳者を見つけるときのコツ
直接翻訳者を探す場合は?
一筋縄ではいかないこともありますが、直接翻訳者を探すこともできます。例えば人脈などの伝手から翻訳者が見つかる、異業種交流会などで探す、LinkedIn や Facebook といった SNS で探すといった方法があります。この場合、直接やり取りをすることができるため、手数料などが発生しないというメリットがあります。
また、探して見つかる翻訳者であるということは、それなりに発信をしている翻訳者であるということでもあります。その発信内容やこれまでの仕事履歴などから、おおよそどういった人物で、どのような能力であるのかが分かるということもあります。
参考: 翻訳を依頼する場合の相場まとめ