MTPEの注意点や実施方法
本記事の3行要約
MTPEは、機械翻訳の下訳を人間が修正する手法で、軽微な修正のLPEと人間翻訳並みを目指すFPEに分かれる。
大量処理に有効だが、原文との照合や誤訳発見には高い言語力・専門知識が必要で、修正範囲の設定次第で効率が大きく左右される。
機械翻訳の品質が低い場合は訳し直しが必要となることもあり、MTPEが常に最適とは限らない。
先日、原文の翻訳が機械翻訳で充分か、それともプロに依頼すべきものかを判断するためのツールを作成し、公開しました。このツールは翻訳や英語(あるいは翻訳対象・翻訳元の他言語)に馴染みのないユーザーが簡易的に依頼判断をすることを想定して制作したものです。
その判定結果として、MTPE という語が出てきます。これは翻訳者にとっては馴染みのある言葉なので、これまでの Tips の記事では記事ひとつを割いて説明することをしていなかったのですが、上記ツールを用いた方に分かりにくいと良くないかと思い、改めてMTPEについて説明する記事を書いておくことにした次第です。
これまでの主な関連記事については、以下をご参照ください。
MTPEについての概要
MTPE とは、Machine Translation Post Edit の略です。機械翻訳で下訳をして、明らかな誤訳やスタイルが統一されていない箇所などを人間の手によって修正するアプローチのことを指します。この修正についてどの程度修正するかによって、LPE(Light Post Edit)と FPE(Full Post Edit)が区別されます。LPE は軽微な修正、FPE は人間による翻訳のクオリティを目指す修正です。
このようなアプローチは、多くのエージェントを抱える翻訳会社が採用していることも珍しくありません。MTPEによって大量の翻訳を処理し、大量のエージェントがその品質チェックを行うという流れです。このようなケースでは、長く続いているプロジェクトでの訳語やスタイルの登録を経て、それに最適化されたAIによる機械翻訳が行われ、そのスタイルから外れるものやそれでも発生した誤訳を翻訳者がチェックする形が一般的です。
もちろん、一般の機械翻訳のユーザーや翻訳者が、自主判断で MTPE を取り入れることも可能です。例えば DeepL や ChatGPT を用いて原文を翻訳し、これをチェックして訳調を整えるのはそういったアプローチだと言えます。
一見すると非常に便利ですが、単純に『自然な日本語であるか』だけをチェックするのではなく原文と照らし合わせて『自然だが間違っている誤訳』なども発見しなければならず、場合によっては MTPE を取り入れることで却って時間が掛かってしまうことがあります。そのため、どの程度の修正が必要であるのかを予め明確にし、その中で修正範囲を妥当な程度に設定することが、MTPE というアプローチの効率化に大きく影響を与えることになります。また、MTPE を行う上でも通常の翻訳や読解に必要な程度の言語力や専門知識などが必要になります。
MTPEの修正に必要な技術や知識
原文と付き合わせてチェックする必要があることから、原文を正しく読めることはチェッカー(およびレビュアー)にとって必須の技術と言えます。もちろん、訳語を正しく読めることもそれと同程度に重要です。そのため、例えば英語と日本語の言語ペアであれば、MTPE を用いる場合であっても、英語力・日本語力を蔑ろにすることはできません。
機械翻訳の精度や自然さが高まれば高まるほど、必然的にAIに取りこぼされるミスの発見難度も向上します。このため、こうした技術が進化すればするほど、皮肉にも MTPE を行うユーザーには逆に高い能力が求められることになります。その他、その原文の内容を正しく理解するための専門知識や経験が必要であることもあります。技術的専門性や文化的理解など、こうしたときに必要となる可能性のある知識や経験は多岐に渡ります。
MTPEだけを翻訳者に依頼できるか
依頼者が自分で翻訳ツールを使い、その出力結果だけを翻訳者にチェックしてもらうことは、不可能ではありません。しかし、あまりにも前提となる機械翻訳の出力精度やクオリティが低いようであれば、翻訳者は改めて全体を訳し直す必要を感じます。そのため、MTPE を依頼した場合でも、MTPE が最適なアプローチではないと翻訳者が判断した場合には、全体の訳し直しか、または MTPE 自体のやり直しを打診される場合もあるでしょう。
